「退職届を出すたびに、施設長から『あなたが辞めたら担当の入居者が死ぬかもしれない』と言われました。それを2年間言われ続けて、辞めることが罪のように思えてきたんです」
— Cさん(32歳・女性)・介護業(特別養護老人ホーム)
「人の役に立ちたい」——介護職に誇りを持って就いた仕事
Cさんが介護福祉士として特別養護老人ホームに就職したのは22歳のとき。「お年寄りの力になりたい」という純粋な気持ちで資格を取り、天職だと感じていた。
10年近く勤務し、担当する入居者との信頼関係も築いてきた。しかし30代を迎えた頃から「このまま体が続くのだろうか」と将来に不安を感じ始めた。
「辞めます」の一言が、2年間の呪縛の始まりだった
30歳を過ぎた頃、腰痛が悪化したCさんは施設長に退職の意思を伝えた。すると施設長は深刻な表情でこう言った。
「あなたが担当しているFさん(入居者)は、あなたのことを唯一の支えにしている。あなたが辞めたら、Fさんが死ぬかもしれない」
Cさんは罪悪感で辞めることができなくなった。その後、退職届を2回提出したが、いずれも「タイミングが悪い」「後任が見つかっていない」と言われて受理されなかった。
夜中に職場の夢を見て目が覚めることが増えた。休日も「入居者のことが心配」という感情が離れず、本当の休息が取れなくなっていた。
「私の人生は、会社のものじゃない」
2年目の夏、友人から退職代行の話を聞いた。「退職届を受け取らせる義務は会社にある。受け取り拒否は違法だ」という事実を知り、自分が不当に縛られていたことを初めて理解した。
退職代行に依頼した翌日、施設長から「どういうことか説明しに来い」という電話があったが、担当者が対応してくれた。Cさんは一切、会社と話す必要がなかった。
退職から1週間、腰痛が嘘のように楽になった
退職代行を通じて有給休暇20日分の消化交渉が行われ、実質的に退職日まで出勤不要となった。未消化有給の買い取り分を含め約18万円が追加で支払われた。
Cさんは現在、通所介護(デイサービス)に転職した。夜勤がなく、残業もほぼない職場で、「介護の仕事は好きだったんだ」と再確認できたという。
「入居者が死ぬ」という言葉を今でも思い出すことがあるが、「あれは脅しだった。私には人生を選ぶ権利がある」と今は言える。
Cさんからのメッセージ
「介護職は「辞めにくい」空気が強い業界です。でも、あなたの体と心が限界なら、入居者より自分を優先してください。辞めることは裏切りじゃない」
