「施設長に「介護の残業は愛だよ。残業代なんか考える人は介護に向いてない」と言われました。3年間、その言葉を信じて残業代なしで働き続けました」
— Sさん(35歳・女性)・介護業(認知症グループホーム)
「認知症の方の力になりたい」——介護士として誇りを持って
介護福祉士の資格を持つSさんは、認知症専門のグループホームに就職した。入居者の生活を支えることに誇りを感じ、精力的に働いていた。
問題は職場の独自文化にあった。「介護職は奉仕の仕事」という価値観のもと、残業代の概念が存在しないような職場だった。
「愛の残業」という名のタダ働き——月80時間
月の残業時間は常に80〜100時間だったが、タイムカードは「定時で切る」ことが暗黙の了解になっていた。
「「愛があれば残業代は要らないよね」という施設長の言葉を、最初の頃は美しいと思っていた。今思えば、搾取の言葉だった」
3年間で失った残業代を試算すると、300万円以上になることが後でわかった。
SNSで「介護職も残業代がもらえる」投稿を見て目が覚めた
SNSで「介護職でも残業代を請求して取り戻せた」という投稿を見て、初めて「自分も請求できる」と思った。
退職代行に相談すると「3年分のうち、時効の2年分は取り戻せる可能性があります」と言われた。翌日に依頼した。
「愛の残業」が、80万円になって返ってきた
2年分の未払い残業代として約80万円が振り込まれた。施設長の「愛だから残業代は要らない」という言葉は、裁判所では通用しなかった。
Sさんは現在、別の介護施設で働いている。残業代はきちんと支払われる。「愛と労働対価は別物だと、35歳でやっと気づいた」
Sさんからのメッセージ
「「介護は奉仕の仕事」という言葉で残業代を払わない職場は違法です。愛情があっても、最低賃金は変わらない。当たり前の権利を主張してください」
